溶接レシピ
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アイアンクラフトじんぱち
静岡県浜松市に工房を構え、捉われのない感性と技法を駆使したアイアン作品を制作。 自然で温かみを感じる暮らしの道具の数々から、迫力の中に優しさも感じる巨大オブジェに至るまで幅広く制作。 その中でも花や木々など緑の中にある鉄が好きで、フェンスやアーチ、ベンチなどのガーデニングデザインを得意としている。 また、鉄や溶接の魅力を伝えるため、どなたでも参加できる溶接ワークショップを定期的に開催。
大作「鉄の花風車」
父親が鉄工所を経営していたこともあり、幼い頃から鉄が身近にあった鈴木氏。 一度会社勤めをしたのち、自分にしか出来ないものを探し求めてイタリアやギリシャなどへ旅に出る。そしてガーデニングデザインの道を志し、いくつかの出会いを経て独立を決意。 会社勤めでは触れられなかったお客様の生の表情や言葉に直接触れられる仕事がしたいという思いを胸に、アイアン作家への道を歩きはじめる。 これまで金属加工や造形を突き詰めて学んできた訳ではない、という鈴木氏。 ただ、だからこそ生まれる気負いや威圧感のない自由で伸びやかな作品の数々には、その作品に込められたその時々の等身大の鈴木氏の想いが表現されているように見えた。 作品作りが鈴木氏そのものなのだと。
建築設計的なインテリア制作などは精密な物作りが得意ではないため、正直に苦手だと伝えお断りしていると笑う鈴木氏。 故にフェンスやアーチ、オベリスクの様な物から、看板・表札などある程度自由で緑や花に纏わるエクステリア関連の仕事が多いという。 また、常に自分の色を出したいと想いながら制作を続けるうちに、大きなオブジェなどの仕事をもらえるようになったという。 自分のやりたいこと、好きなこと、得意なこと、という基準を何よりも大切にしている鈴木氏。 ここまで辿り着く道程は決して簡単ではなかったと思うが、少年の様な屈託のない笑顔で仕事への思いを語る姿がとても印象的だった。
これまでお客様の要望に応えることの繰り返しによって制作する物の幅が広がってきという。 その中で、大切にしているのは「現場主義」。 机上での作業によるイラストやアイデアを基に頭だけで考えて作品を制作するのではなく、現場に行きお客様と話し、その場の景色や空気を感じ、イメージを湧かせてそれを工房に戻って形にしていく。 そこにはお客様の期待や想像を超えられるような作品を作りたいという思いも強い。 自分とお客さんが共に喜べる仕事を、一緒に作り上げていく・・・というのが鈴木氏の制作スタイルだ。 鈴木氏の作品は、作り手として常にお客様に寄り添い、人と人との繋がりによって完成する。
溶接に関しては「溶接は人類の歴史の中の一部であり骨みたいなもの」だと言った。 溶接は金属加工の技術の進化の歴史の一部であり、表面には見えないがあらゆるところで目立たずに社会を支える必要不可欠なもの、とういう意味なのだろう。 また自身の仕事における溶接については、あくまでも表現したいもの形にする為に使う道具や技法であるという。 もちろん溶接が綺麗にできると気持ちがいいが、だからと言って溶接がすごく上手くなりたいとは思っていないという。 それは、自分は溶接職人ではなく表現者だと思っているからで、技術が表現を上回るとその技術が表現を消したり隠したりすることがあるという。 そして「職人は技術の追求、アーティストは表現の追求であり、であるならばアーティストには表現に足りる必要最低限の技術があれば良い」と。 また「技術の追求の方が基準みたいなものがあるから見れば分かるので評価され易い。表現は個人差や好みの違いがあるから評価は分かれるし難しい」と技術と表現の違いを語った。 では自分はどっちをやりたいのか?追求したいのか? 「自分は競争が嫌いなので天秤にかけられやすい土俵に乗るのではなく「自分で自分の土俵を作るしかないと思っている」と語る言葉が鈴木氏の全てではないかと思った。 技術で勝負するのではなくあくまでも表現という仕事を主戦場にする、ブレない自身の仕事の存在意義や価値に対する自覚の強さみたいなものを感じた。
工房内の作品展示スペースどれもそばに置いておきたくなる作品ばかりだ
鉄をひと言で表現すれば「丁度いい」という言葉が出た。 鉄の良さを上げれば沢山あって、“エッジが効いている”とか“加工の幅が広い”、“温かみも出せる”など... でも様々な金属がある中で鉄はコストも加工のし易さも、また素材自体が持つ存在感や強度など、全てが丁度いいと語る。 だからずっと様々なところで使われているのではないかと。 そして何かを支える存在であること、また組み合わせる異素材をより際立たせることなど、縁の下の力持ち的なところに魅力を感じるのだという。
定期的に開催している溶接体験ワークショップは小学生から参加可能だ
定期的に開催している溶接体験はとにかく続けていくことが一番大切だと思っている。 また最近では、業務時間外に工房を開放する“夜工房”という試みを始めた。 これは、家や職場とは違うサードプレイスみたいな場所にじんぱちのファクトリーがなれればという思いから始まり、またそこがお互いの気付きの場になれば、と思っているという。 目先の仕事だけではなく、様々な人達とのリアルでの交流や会話を大切にする姿勢の中に、継続的な溶接体験ワークショップ開催を大切にされている理由もあるのだろう。 最後に「これからは自分の思っている物は作りたくない 自分の想像を越えることが作品の勢いであり、その点、陶芸家は羨ましい。陶芸では最後はどうやっても自然の産物となり、計算ではない完成形となるから。陶芸はズルいよ(笑)。鉄でも陶芸のような表現をすることを探求していきたい」と言った。