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株式会社谷元工業 &.Fe Design
株式会社谷元工業 代表 / &.Fe Design 代表 愛知県豊橋市 建築現場での鍛冶・溶接・切断作業を中心に、加工・取付・修繕など鉄に関する工事はすべて行う。高層建造物を内側から支える大規模な鉄骨工事から、ミリ単位を調整するスキルを要する溶接作業まであらゆる作業に対応。 また、鉄と異素材を組み合わせたインダストリアルのブランド「&.Fe Design」をプロデュース。アイデアとデザインセンスを取り入れた家具や雑貨などの制作・販売を手掛ける。
19歳の頃に溶接と出会い「面白いじゃん!!」の直感でその魅力と可能性の虜になった谷元氏。 ただ、ある時その面白いはずの溶接の仕事が単なる繰り返しの進化や変化の無い日常と化していることを感じた。 そんな「モチベーションが上がらない溶接=面白くない溶接」の現状を変えようと様々な提案を試みたものの、残念ながらその想いやアイデアは会社に届くことはなかった。 そんな中「代わり映えの無い日常の中でも、“溶接をしている”ということだけが自分にとって唯一の仕事を続けていける意味や価値を見い出してくれていた」と語る谷元氏。 そして、その自身にとって何よりも大切な「溶接」という存在の持つ可能性や面白さを追求するため、自らの意思と責任で舵を切ることが出来る“独立”という道を選んだ。 その時、谷元氏は26歳になっていた。
現場に呼ばれて対応する溶接の仕事に始まり、徐々に建築金物に纏わる精度を求められる繊細な仕事の依頼が来るようになり自分で図面も描き始めたという。 そして図面を描くことを楽しんでいる内に鉄骨などの大きい物にも携わるようになり、自分が図面を起こしたものが大きな形になることにやりがいを感じ、その建造物の大きさに比例して達成感も大きくなっていった。 そんな時、たまたま友達からアイアンの手摺りや階段の制作・設置などの相談を受けた。 これが今までやってきた大がかりな鉄骨工事から、一般家庭の暮らしの中のインテリアやエクステリアに関わる身近な溶接へと、溶接の可能性が広がるきっかけとなる。 「&.Fe Design」の始まりである。 それはお客様に自らが主体的に創意工夫して提案することが出来る溶接、そしてその結果、お客様の喜びの声と笑顔にダイレクトに触れることが出来る・・・今までとは全く異なる新しい溶接の扉を開いた瞬間であった。
新しい溶接の扉を開いた理由をもう一つ語る谷元氏。 「目に見えてないところで沢山使われている社会にとっては欠かせない鉄。その鉄を一ミリ単位で組み上げても壁紙が張られたらその自分達の仕事は見えなくなってしまう。 だったら縁の下の力持ちではなく、見える、見られる仕事がしたかった」と。 その熱く語る言葉の中には単に自身達の仕事を見てもらいたいという欲求だけでなく、鉄や溶接=見えなくするもの、隠すものという日本の文化を変えたい、鉄という素材と一心同体で表舞台に出たい、お客様に近付きたいという想いが掛け算になっているのだろうと感じた。
鉄という素材の持つ魅力は錆びることも含めた自然な経年変化と、コンクリートなど様々な異素材との相性の良さだと語った。 谷元氏はもともと物事を考えるのが好きで、こういうところに鉄があったらいいなとか、こういう使い方をしたらどうだろうといったことを常に考えているという。 その豊富なアイデアをもとに、お客様に寄り添った提案をしている姿が目に浮かんだ。 これからも異素材と鉄の組み合わせを求める人たちのニーズに合わせて、様々な&Fe(何々と鉄)にチャレンジしていくのだろう。 そして「正直、職人としての溶接のビードの仕上がりで勝った・負けたの技術を競うような同業者同士のライバル意識が無いと言えば噓になる。(笑)でも技術的に追いつかない部分があってもいい。それはアイデアで補えるし勝てる。アイデアなら絶対に負けない。」と言い切った。 その言葉の中に、「&.Fe Design」というお店の存在に込められた谷元氏の情熱やアイデア、お客様への想いがあるのだと感じた。
ところどころの節目で何度も谷元氏が繰り返し口にした「俺はずっと常に溶接ありきだから」という言葉。 この仕事に出会っていなければ・・・などとは考えたこともないと言う。 また、溶接という仕事に力を入れようと思ったら他のことが一切出来なくなり、溶接と出会う前にやっていた色々なことは趣味も含めてすべて止めたという。 社長である自分だけ昼飯も食わずに平気で仕事をしていることもある一人ブラック企業と笑う谷元氏。 そんな谷元氏に対し「ひと言で言うと溶接とは?」と尋ねると「今の自分にとってなくてはならない物。それがあるから今の自分がある」と返ってきた。 そして「鉄という素材の魅力は?」と問うと「人間と同じで老いて朽ちていくところ。鉄と鉄、人と人を繋ぐという意味でも合致する」とのことであった。 溶接も鉄も谷元氏の人生そのものということだと感じた。
溶接の魅力を色々な人、特に若い人達にたくさん知ってもらいたい、と谷元氏。 そのためには自分の知識や経験は惜しみなくオープンにするので起業を志して欲しい、とも。 次代を担う若者に向けては、自分で倍働かずに自分の代わりに動いてくれる仲間を作ってほしい。そうすれば夢や希望は叶う、と。 そして、満足感を大切にし、何処かで妥協したという気持ちを残さない仕事をして欲しいと熱いメッセージを寄せてくれた。 自身のこれからに関しては、溶接体験事業を早くスタートさせ、それを一人でも多くの人に知ってもらいたい!一人でも多くの人に溶接をやってもらいたい!という。 コロナ禍もあり、何か新しいこと、面白いことをやりたいと思っている人も多く、そういったチャレンジに溶接はぴったりだと谷元氏。 そして、これからは今迄よりももっと大きいプロジェクトに関わっていきたい、またアート製のある取り組みや仕事を大切にしていきたいと語ってくれた。 これからもストイックに自らを鼓舞し走り続ける谷元氏の後ろ姿を見た気がした。
「有言実行」